2018年2月9日金曜日

避難所運営ゲーム(HUG)に参加しました

2月7日(水)、東温市防災士会 会長の岡村和典氏と、東温市役所危機管理課から2名の職員の方にお越しいただき、PTA研修「避難所運営ゲーム(HUG=ハグ)」が開催されました。

「えっ?HUGって何?ゲームって何するの?」というのが、最初にその名前を聞いた感想。

HUGについては後ほど詳しく説明するとして、まずは講師のご紹介をします。
自己紹介をされる岡村氏

岡村氏は、東温市防災士会の会長として様々な場所で防災に関する講演をされるなど、地域の防災意識を高めるために精力的に活動をしておられます。

そして、こんなにもたくさんの資格をお持ちです。

・防災士
・応急手当普及員
・えひめ防災インストラクター
・介護福祉士
・介護支援専門員
・認知症介護指導者
・認知症キャラバンメイト

ここに並べられているものだけでもかなり凄いですが、地域の防災のために、また、いざその日が来てしまった時のために少しでも役立つ知識を身に付けようと、さらなる資格取得のための勉強を日々続けられています。

と、まるでスーパーマンのような方です。

そして、何と言ってもお話が分かりやすい!
会場の保護者は、一気に岡村氏の話術に引き込まれていきました。


HUGを始める前に、まず日本を取り巻く自然災害の脅威についてのお話がありました。

当日参加できなかった人のために、また、参加された方がいつでも思い出すことができるように、ちょっと詳しくお話の内容をお伝えします。


みなさんは、地球のプレートはご存知ですよね?
地球の表面を覆う、厚さ100kmほどの岩盤のことです。
(プレートが地震を起こすメカニズムについては、こちら↓のサイトを参考にしてください)
内閣府防災情報のページ

そして広い地球を覆っている十数枚のプレートのうち、4枚もがこの小さな島国日本列島に関わっています。
日本に関わる4枚のプレート

つまり、日本はプレートに起因する地震が「絶対に」起こる国なのです。

東日本大震災から間もなく7年になりますが、地球の営みから考えるとその期間は決して長いものではなく、過去のものとして捉えることは危険といえるでしょう。


私たちが住んでいる愛媛県では南海トラフ地震が一番気がかりですが、その南海トラフが動いたら富士山も噴火するだろう、と岡村氏は言います。

九州から関東にかけて西南日本を縦断している中央構造線上には伊方原発もあり、活断層型の地震の場合の影響も懸念されます。
これが動けば被害はさらに甚大なものに


講習は、放射線について、クラッシュシンドローム、トリアージ、津波、発生直後から始まる避難生活の問題点・・・と、非常時に起こり得る様々な現象についての話が続いていきます。
これがトリアージカード。実物です。


恐ろしいことですが、南海トラフ地震はすでにカウントダウンに入っており、近い将来、必ず来ます。
そんな中にあっても、対岸の火事と思っている人が何と多いことか・・・と岡村氏は憂いていらっしゃいました。

ひとたび大災害が起こればその被害は甚大で、私たちの暮らしにどれほどのダメージがあるのか計り知れません。

人間の力で災害を止めることはできません。
しかし出来ることから実践し、訓練を重ねることで、減災はできるはずです。


今回の研修では、避難所(H)運営(U)ゲーム(G)を通じて、避難所で起こりえる状況の理解と適切な対応方法を学びました。

ゲームは、進行役(カードの読みあげ)と、プレーヤー6名ほどが1グループになって行われます。

ここからは、あなた自身がこの状況に置かれたと考えて読んでみてください。

20XX年2月x日(日)、AM8:00、日曜日の朝をゆっくり過ごしていた時に、突然最大震度7の大地震が発生
  🔻
外は今年一番の冷え込み
  🔻
自宅近くの小学校が避難場所に決まっている
  🔻
日曜日なので、学校の管理職も他の教員も出勤していない
  🔻
自治体職員も駆けつけることができない
  🔻
あなたは、地震発生から1時間後にその小学校に集まった住民の1人です

HUGは、同じグループの人たちといち早く学校に到着したつもりで、次々にやってくる避難者の状況や要望を考慮しつつ対応する・・・というものです。
(ゲームの詳しい内容について知りたい方は、開発を手掛けた静岡県の公式サイトをご覧下さい)

実際、東日本大震災の時は避難所の運営は地域住民によって行われました。
大災害が起きたからと言って、誰かが避難所にやって来てどうにかしてくれるというものでは決してないのです。


ゲームは待ったなしで始まり、大変なスピードで進んでいきます。
何の準備もできていないところに次々と避難者が

『カードの読みあげの早さ = 次々とやってくる避難者たち + 矢継ぎ早にやってくる情報』です。

後期高齢者、妊婦さん、乳幼児、親とはぐれた子ども、車椅子利用者、知的障がいを持つ子ども、高熱を出している人、怪我をしている人、ペットを連れて来る人、持病があるが薬を持ち出せなかった人・・・地域の住人ばかりでなく、バス2台分の団体旅行者(バスは動かず、歩いて来た)が大集団で押しかけて体育館があっという間にいっぱいに。
体育館を模した模造紙にはすでに人がいっぱい


その合間を縫って、「トイレが溢れている」「車はどこに停めたらいい?」「テントはどこに設置したら?」「仮設トイレの場所を決めておいて」などなど、次から次へと対応することが出てきて、途中から追いつかなくなってしまいました。
災害対策本部からの情報も次々に

やっとの思いで全てのカードをこなしたのですが、見直してみたら「体育館はこれ、絶対に入りきらないでしょう」というくらい詰め込んでしまっていたり、災害対策本部からの伝言も忘れているのがあったりと、大変な状態でした。

今回は机の上だけで解決(とは言えこれも怪しい)できていましたが、実際の困難さはこれの何十倍、何百倍にもなるのかと思うと、途方に暮れるだろうというのが正直な感想です。

しかし、実際には「何の予備知識もないまま、いち住民として、やったことのない避難所の運営をすることになる」のです。

ゲーム終了後、各グループで気が付いたことをまとめ、発表します。
やっぱり名簿は大事よね

トイレのシミュレーションもした方がいいかも

様々な意見が出されましたが、どのグループからも共通して
「専門職の方や特技のある人、ボランティアとして動ける人などを、最初の受付の時点で名簿に登録しておく」
という点が挙げられました。
発表のマイクを回す参加者

もしもこの知識を持っている人が一人でもその避難所に居れば、早い段階から受付の重要性を提案できることでしょう。

このHUGは、ゲームを通して避難所運営の困難さを理解できるばかりでなく、一度でも体験しておけば、その反省点も生かして必ず「その時」に役立つのだと岡村氏は力強くおっしゃっていました。


私たちの子どもたちは、避難所生活においては「要支援者」となるケースが多いと思います。
親の私たちは我が子に付っきりとなり、避難所の運営側に回ることもなかなか困難だろうと考えられます。

だからこそ避難所運営のこともきちんと知識として持っていて、助けが欲しい時はどのようにヘルプを出したらいいのか、また我が子を守りつつ自分には何が手伝えるのか、更に今の備えで足りないものは何か、改めて考えるきっかけになりました。

もっとたくさんの人に体験して、知って欲しいと強く思いました。

そして参加した全員が感じた、

何よりも大事なのは「絆作り」

岡村氏は「全てはこれに尽きます。」
と締めくくられていました。

「・・・だって、知らない人が倒れていたら声をかけるのをためらっても、知っている人だったら声かけてもらって助かる率が高くなるでしょ?」

石巻で生の声を聞いて来られた岡村氏のその言葉が、今もリフレインしています。


最後になりましたが、お忙しい中私たちのためにご来校いただいた岡村様、東温市役所危機管理課の2名の職員様、貴重な体験をさせていただき、本当にありがとうございました。